初めまして、Kazです。私はラグジュアリーからミドルクラスのホテルを中心に、接客の現場で15年以上過ごしております。これまでオペレーションや法人営業のマネージャーを経て、総支配人やエリアマネージャーも経験しました。主に事業再生・リブランドホテルでの新規・再起担当です。
現在はその経験を活かし、事業再生や経営改善を行うホテル・旅館・飲食店専門のコンサルティングファーム代表です。日々、お取引先とともに売上アップとコスト削減に取り組んでいます。今回は、私の経験上ぜひ取り組んでいただきたいコスト削減項目についてお話しします。
ホテル運営で削減可能なコスト
皆さんご存じのように、ホテルや旅館では「一日に売れる空間」が決まっており、空室があっても翌日には持ち越せません。付帯売上は別として、その日の売上上限は決まっています。その中でどのように利益を出し、できるだけ多く残すか。売上とともに、コスト削減にも取り組んでいくことが重要です。今回は、ホテル運営でコスト削減が可能な部分を見ていきましょう。
人件費
多くのホテルにおいて、一番大きなコストは人件費です。この部分を合理化・省人化・無人化できれば、大幅なコスト削減ができることは明白です。ただ十分に気をつけたいのは、スタッフのやる気を削ぐような削減は避けるべき、という点です。
そのスタッフにしかできないことや人の手でやる必要があるもの、能力が反映されるものは削減対象外としましょう。コスト削減がモチベーション減に繋がるのは、長い目で見た時にはマイナスにしかなりません。
逆に、それ以外の定型作業やルーティンでできる内容は自動化し、スタッフの作業負担を軽減するのも一つの手です。
最近見かけるようになった自動チェックイン/チェックアウトはルーティン作業の最たるもので、この部分を自動化できれば大幅なコスト削減に繋がります。また、PMS(ホテル管理システム)・セルフチェックインシステム・ブッキングエンジンなどが一括管理できれば、労力も大幅に軽減できます。
例えば HOTEL SMARTを使えば、ご予約~決済までの一連の流れを、お客様のスマートフォンやホテル端末で完結できます。オンラインレジストレーションや、クレジットカードによる事前決済にも対応しています。各種サイトコントローラーとも連携し、また旅館業法も遵守されたシステムなので安心です。
通常はフロントやナイトスタッフが担当する業務ですが、小さなホテルでも最低1,2人は必要です。また、締め作業や数値管理も含めると、かなりの人数を要します。
仮にイン/アウト時のヘルプスタッフとして、
15~19時/7~10時の計7時間、時給1,200円で1人雇った場合、1日8,400円の人件費がかかります。
週末や特定多忙日に絞り、10日勤務としても月額84,000円です。人数や日数が増えれば、負担はもっと大きくなります。
このような自動化への検討は、単純に自動化システムの初期費用・月額負担を見て躊躇される方もいらっしゃいます。ただ、パートやアルバイトスタッフに担当させた場合の時間給・人件費と比較してみてください。長期的に見るとそのコスト削減効果は投資額大きいと判断できます。また、お客様にもフロントでの煩わしい手続きを省略・簡略化していただけます。検討に値する大きなコスト削減ポイントです。
光熱費
光熱費は、スタッフ全員で取り組むと結構なコスト削減が可能です。また、SDGsや省エネなど、現代ビジネスに必要な意識を根付かせることもできます。
照明のLED化は一般的な流れですが、さらにバックヤードや利用頻度の低いエリアで、人感センサーによる自動On/Offも検討しましょう。太陽光パネルを設置し、社内電力の大部分を補っている宿もあります。これは自社の使用状況と初期投資を比較検討すればよいでしょう。
電気料金の具体的な削減方法は、「ピークカット」「ピークシフト」「蓄電池」「デマンドコントローラー」などで検索してみてください。館の規模にもよりますが、私が担当した事例では、年間数万~100万円弱の経費削減ができました。
ボイラーを使用している宿では、重油やガス費用もかなり大きな負担になっています。当社取引先では、曜日ごとのお客様数を平均値化し、売上とコストを比較、思い切って曜日休館を設けたところもあります。これも戦略的なコスト削減と呼べます。
余談ですが、ある宿のオーナーは雨水を貯め、送迎車や庭園の手入れなどに利用しています。貧乏くさいのではなく、経営者がここまでするからこそ、スタッフにも光熱費削減の意識が芽生えるのです。まずは役職者が率先垂範し、取り組む姿勢を見せましょう!
インターネット
かなり以前に契約した、高くて内容の悪いインターネットプランをそのまま使っている宿も見かけます。今後のDXやIoTに十分対応できる能力があるか、改めてネット契約料金を見直してみましょう。
最新のインターネットへの更新は、結果的に様々なコスト削減に繋がります。何年もプランを見直していない宿は、すぐにでも取り掛かりましょう。
当社が担当した例ですが、あるホテルでは各フロアにドリンク自動販売機を設置する代わりに、その飲料会社がインターネット工事・月額料金を負担してくれています。いまは自動販売機もネットが必要であり、この様なコスト削減方法もあります。
また、タダネットのようなガス会社を乗り換えることで、無料でインターネットが使えるようなサービスもあります。利用には審査や条件がありますが、こういったサービスも活用してお得にインターネットを使いましょう。
リネン
通常は必要な枚数をのリネンを発注しますが、宿によっては納品数をパートナー企業に任せているケースもあります。
予備在庫は必要ですが、過剰在庫は無駄です。必要な枚数を超えて発注していないか、常にチェックしましょう。また、連泊用ECOプランなどリネンの量を減らし、お客様に還元しながらコスト削減することも考えましょう。
私が過去担当した物件でリネン発注数を精査した際には、約8%の過剰分を削減できました。
また、別の取引先ではバスタオル不要プランを用意しています。例えばバスタオルのクリーニングに100円かかる場合、そのバスタオル不要プランは通常より50円引など、お客様に還元しながらコスト削減もできています。
アメニティ
最近は歯ブラシや髭剃りなど、ご自分の物を持ち込まれるお客様も増えています。ハイエンド以上のホテルでは難しいですが、例えばアメニティ類はフロントで必要な方にだけお渡しする、またはご自分で必要分を取っていただくなど、無駄な消費はなくせます。これは清掃スタッフのアメニティ準備も減らすことができ、結果的には清掃時間の短縮にもつながります。
実際の事例としては、約140室程のシティホテルでは、お客様にアメニティを取っていただくことでアメニティ消費量の12%削減に成功しました。
また、このセルフサービス方式ではアメニティの原価だけでなく、アメニティ補充にかかる人件費も削減できます。清掃時のアメニティ準備に各部屋1分計算で、満室時140分の労働時間短縮となります。
OTA手数料
OTA(オンライン旅行代理店)は強力な集客ツールですが、その手数料は馬鹿になりません。ただ、集客力やお客様への訴求を考えた場合、この部分は必要経費で無くすことはできません。手数料をできるだけ取られずに集客できる方法も、並行して考えていきましょう。
まず、常に自社サイトが一番安くてお得であるベストレート保証は必須です。最近はこの保証が一般的にも認知され、OTAサイトと自社サイトを比べる方も多くなっています。その名に恥じぬよう、必ずベストレートにしておきます。
OTA手数料は通常6~15%程度ですが、それが自社直予約に変わるだけでその分が利益として残ります。その点をしっかり意識し、自社サイトでご予約いただけるよう誘導方法を考えましょう。
自社ホームページのデザインを変更したり、使用しているブッキングエンジンをリニューアルしたり、一度Webサイトに訪れた見込み顧客からの予約率を少しでも向上させられるようにしましょう。
ただ、OTAでは独自のキャンペーンやクーポン配布を行うことがあります。その時の価格競争にまで対抗すると、キャッシュフロー面で体力を消耗してしまいます。自社利益を考慮し、臨機応変に対応しましょう。
また、OTAが行うキャンペーンやクーポンへの勧誘がありますが、わざわざ乗る必要があるのか、それは宿の状況によって異なります。安易に営業にのらず、十分な検討が必要です。
ホテル運営コスト削減を目指す際の注意点
ここまでコスト削減できる項目を挙げてきました。ただ、取り組む際に注意してほしい点があります。そのコスト削減が自社のブランディングやペルソナに沿っているか、それを壊すことはないか、その点は十分に気をつけてください。
自社が大切に築き上げてきた顧客から見たイメージや、「あのホテルであれば間違いない」という信頼、そのようなブランディングを損なうコスト削減は避けましょう。また、自社の理想的な顧客像であるペルソナが、そのコスト削減でがっかりされないか?そのペルソナの気持ちになって考えてみることも重要です。
目に見えるリネン・アメニティの陳腐化や貧相さ、また清掃の簡略化による館内清潔感の質低下などは、ブランディングやペルソナのCSに大きなダメージを与えます。結果的にそれを取り返すために非常に大きな労力と費用が必要となれば、それこそ本末転倒です。そのコスト削減が後々にどのような影響をもたらすか、そこまで考えて進めていきましょう。
DXで効率的な施設運営を!
今後はDXが進み、AIが担当するビジネス・業務も増えてきます。人が人をもてなす、それは接客業の基本です。ただ、時代の変化は敏感に捉えていきたい。観光・宿泊業界の流れとして、最近は空港や宿泊施設でも自動チェックインは珍しくありません。ご利用になるお客様の抵抗感や不安感も軽減されています。
ホテルでもDXやIoT・AIoT(AIによるIoT)により、人の単純作業を減らせる時代です。その分、スタッフはより丁寧な接客に注力でき、質の高いおもてなしに集中できます。それは顧客だけでなく従業員の満足度向上に繋がる改善であり、「自動化することにより接客の質が上がる」取り組みです。
ルーティン作業は自動化する。その分、人材を有効活用する。今後、この視点は重要です。HOTEL SMARTではルーティン業務となっていたホテル業務のDXを推進しています。是非この機会に資料請求してみてください!